ハーレクインの大富豪 -アラブのシーク-
ハーレクインが、他の出版社を圧倒するきっかけとなったのが、シークと呼ばれるアラブの貴族たちとの恋物語集です。
シークとは、アラブ圏における英語のMr.やSirに近い男性の尊称でアラブ部族の高貴な男性のことです。諸外国ではSheikh、またはsheekhなどと表記されています。
同じアラブ圏でも、場所によって発音が微妙に異なり、シェイク、ジェイク、シャイフなどと読まれますが、日本のハーレクイン作品では、統一してシーク、と呼んでいます(ごく一部の小説では、シェイク、ジェイクと表記しています)。
シークは部族の長の家に生まれた男性、または宗教的、経済的に部族を大きくした偉大なる男性に、人々が敬意をこめてつかう称号です。そうは言ってもアラブ諸国の習慣になじみのない私達にはピンとくるものではありません。
おおざっぱに、部族の長老やリーダーがシークだと思っておけば十分ではないでしょうか。ただし、部族の名は、アラブにおいて、そのまま住む地域、つまり町や市や、県、そして国を現すようなもの。
ですから、小さな部族(町)にも、大きな部族(国)にもシークの称号を受け継ぐ男性がいます。ハーレクインに登場するシークたちは、数ある部族の中でも、特に大きく権威のある部族の中で国王のような権力をもっている人達が多いですね。
また、シークは選挙で選ばれるのではなく、部族の血筋で受け継がれるので、作中では彼らのことを「砂漠のプリンス」と表現するんですね。と、堅苦しい説明はこのくらいにして、今もなお、強烈な父性で国を牽引する砂漠の王族との恋物語を、ハーレクインの作家陣は熱烈に愛してきました。
なぜか、シークものでは女性の妄想が過激に爆発するシーンが多いんです。砂嵐を避けて入った砂漠の洞窟で、財宝の中からシークが見出したのは女性を愛する先祖伝来の道具だったり……。ラクダに乗ったまま結ばれる方法をヒロインに教えてあげるシークもいれば、「東洋の神秘だよ」と囁いて何度も何度もヒロインを酔わせるシークなど。
ハーレクインのヒーローは揃いも揃ってベッドの腕に自信ありの男性ばかりですが、道具を取り出したり、二人の愛の巣に妙に凝った演出をほどこすのはシークたちくらいのものです。やはり、ハーレムがあったからなの?
決して安易にエッチな表現をしないハーレクインが、強引で傲慢で魅力的な肉食系の砂漠の王子たちに今夜は酔いしれてください。