ハーレクインヒストリカル・スペシャル
軽いタッチの恋愛ものは読み飽きた。もっと骨太な作品が読みたいというあなたにおススメしたいのがヒストリカル・シリーズ。2011年、ヒストリカルは装丁を改めて、ヒストリカル・スペシャルというレーベルになって再出発しました。
ヒストリカル・スペシャルはその名の通り、歴史をベースにしたハーレクインの恋物語集です。英国、フランス、イタリアなど歴史ある国で育った筆者たちが、豊富な資料を駆使し、過去の世界へ私達をいざなってくれます。13~19世紀まで扱っている作品の幅も広く、中にはローマ時代のものや、ヴァイキングものなど、10世紀以前のものまで見られます。
なかでも特に人気が高いのが、英国摂政期時代を書いた「リージェンシー」シリーズ。1800年初頭の、英国が世界に君臨していく頃の物語です。すぐにはイメージが湧かないと思いますので、例を出してご説明します。
アニメにもなった人気コミック・黒執事は、ヴィクトリア女王の時代が舞台。彼女は1819年、まさにリージェンシーの終わりに生まれた女性。彼女はけっこうなお婆ちゃんに描かれていますので、おそらく、黒執事は1870~90年(50~70歳)頃を舞台にしているのでしょう。
また、かの有名な名探偵・シャーロックホームズも、1872年に大学卒業かと思われています(もちろんフィクションです)。つまり、「リージェンシー」シリーズはみなさんがよく知る黒執事セバスチャンやシャーロックホームズ&ワトソンが活躍した時代より、約6~70年前くらいの英国を舞台にしたお話ということになります。
ヴィクトリア女王が英国の発展に大きく寄与したのは歴史が明かす通り。彼女が即位する前は政治がまだ不安定で、ジョージ3世の放蕩息子たちが、好き勝手しており、いつもスキャンダラスな話題をふりまいていました。
この時代の令嬢たちや、彼女らを保護する立場にある人達は、浮世を流す気まぐれな王や紳士らしからぬ振る舞いを平然とする貴族らから、うまく自分を守らなくてはなりませんでした。王と一対一にならないように、かといってご機嫌をそこねないように、賢くなければいけなかったのです。
ウィットに富んだ駆け引きに、マナーハウスと社交界を行き来する間の馬車での恋のたわむれ。その間も英国は大きく変わっていきます。発展を続ける都市部とのどかな田園風景の対比などなど、歴史のうねりの中で交差し、大きく広がっていく作品の世界と二人の愛。骨太な恋物語を読みたい方は、ぜひ、一度、手にとってみてくださいね。